ベトナムの日系企業でよくある「言語の壁」と業務システムの多言語対応

日本人管理者とベトナム人スタッフが同じ職場で働く日系企業では、日常のコミュニケーションだけでなく、業務システムの利用場面でも言語の問題が生じます。この記事では、言語の壁が業務のどこで発生するかを整理し、システム選定時に確認すべき点を説明します。

言語の壁は業務のどこで発生するか

「言語の壁」というと会話の問題を思い浮かべますが、業務システムに関しては別の場所で発生します。主に次の4か所です。

操作画面が読めない

最も分かりやすい問題です。日本語だけのシステムをベトナム人スタッフが使う場合、メニューやボタンの意味が分からず、操作を丸暗記することになります。この状態では、想定外の画面が出たときに対応できません。

申請内容をどちらの言語で書くか決まらない

申請者と承認者の言語が違う場合、申請書の本文をどちらで書くかという問題が生じます。実務では「申請者が日本語で書く」運用になりがちですが、これは申請者に負担を強いる方法です。

結果として、申請内容が簡素になったり、意図が正確に伝わらないまま承認されたりします。差し戻しの理由がベトナム語で書かれていて申請者が理解できない、という逆方向の問題も起こります。

通知メールが読まれない

承認依頼の通知が日本語で届くと、ベトナム人スタッフは内容を確認せずに放置しがちです。件名だけでも判別できればよいのですが、そうでなければ通知の意味がなくなります。

操作説明・マニュアルが伝わらない

システム自体が多言語対応していても、運用ルールの説明が日本語だけであれば、正しい使い方は浸透しません。

「翻訳版UI」と「多言語設計」の違い

製品説明で「多言語対応」と書かれていても、実際の設計には大きな差があります。押さえるべきなのは次の違いです。

翻訳版UI

システム全体で表示言語を一つ選ぶ方式です。管理者が「このシステムはベトナム語で使う」と設定すると、全ユーザーがベトナム語の画面を見ることになります。

この方式では、日本人管理者もベトナム語の画面を使わざるを得ません。結果として、日本人が読めるように日本語設定に戻し、ベトナム人スタッフが困る、という状態に戻ります。言語の壁の解消にはなりません。

多言語設計

ユーザーごとに表示言語を設定する方式です。同じ書類を、日本人管理者は日本語の画面で、ベトナム人スタッフはベトナム語の画面で扱えます。

相手に言語を合わせてもらう必要がなくなるため、双方が自分の得意な言語で業務を進められます。ベトナム拠点で使うシステムを選ぶ際は、この方式であるかを必ず確認してください。

日本人管理者とベトナム人スタッフが、同じ承認待ちの文書をそれぞれ日本語とベトナム語の画面で確認しているイメージ
同じ文書を、日本人管理者は日本語の画面で、ベトナム人スタッフはベトナム語の画面で確認します。

システム選定で確認すべき4点

1. ユーザー単位で言語を設定できるか

前述のとおり、これが最も重要な点です。「言語切替ボタンがある」だけでは不十分で、設定がユーザーごとに保存され、次回ログイン時も維持されるかを確認します。

ログインのたびに切り替えが必要な設計だと、実運用では使われなくなります。

2. 通知メールが受信者の言語で届くか

画面が多言語対応していても、通知メールが一律で日本語というシステムは珍しくありません。承認依頼、却下、差し戻し、配布通知のそれぞれについて、受信者の設定言語で送られるかを確認してください。

特に、承認待ちをまとめて知らせるダイジェストメールがある場合、これも言語別に用意されている必要があります。

3. 入力されたデータはどう扱われるか

ここは誤解が生じやすい点です。システムが多言語対応していても、ユーザーが入力した本文が自動翻訳されるわけではありません。

ベトナム語で入力された申請理由は、日本人管理者の画面でもベトナム語のまま表示されます。多言語対応が解決するのは、あくまでメニュー・ボタン・項目名といったシステム側の表示です。

この点を踏まえ、運用ルールとして「申請理由は日本語とベトナム語を併記する」「金額や品目など定型項目で判断できる設計にする」といった工夫を組み合わせることになります。

4. 承認履歴の表示言語

誰がいつ承認したかという履歴は、監査や引き継ぎの際に参照されます。この履歴部分がシステム固定の言語で表示されると、片方の言語の担当者が確認できません。履歴表示も言語設定に従うかを確認しておくと安全です。

運用面で気をつけること

システムの多言語対応は必要条件ですが、それだけで言語の壁がなくなるわけではありません。運用面では次の点を整えます。

  • 操作マニュアルを現地の言語で用意する — 画面がベトナム語でも、運用ルールの説明が日本語だけでは伝わりません
  • 申請項目名を平易にする — 「稟議」「決裁」「起案」といった日本語特有の概念は、翻訳しても意味が伝わりにくいことがあります
  • 定型的な申請はテンプレート化する — 自由記述を減らすことで、言語による記載の揺れを抑えられます

ベトナム拠点向けの機能については、ベトナム拠点向けの設計もあわせてご覧ください。

まとめ

業務システムにおける言語の壁は、操作画面・申請内容・通知メール・マニュアルの4か所で発生します。このうちシステム側で解決できるのは、ユーザー単位での言語設定と、通知メールの言語別出し分けです。

一方で、ユーザーが入力した本文は自動翻訳されないため、運用ルールとの組み合わせが必要になります。この前提を理解しておくと、導入後のギャップを避けられます。

ベトナムの承認ワークフローシステム E-Documentは、表示言語をユーザーごとに日本語・英語・ベトナム語から選べる設計です。通知メールの文面も言語別に用意しており、日本人管理者とベトナム人スタッフが同じ稟議をそれぞれの言語で処理できます。承認ワークフロー全体の課題整理はベトナムの日系企業における承認ワークフローの課題と解決策をご覧ください。

3言語対応の画面を、資料でご確認ください

製品紹介資料(PDF)は、フォーム送信後すぐにご覧いただけます。デモ環境でのお試しや、お見積りのご相談はお問い合わせからどうぞ。

機能一覧・システム構成・導入の流れをまとめた資料です。

資料をダウンロード(無料) お問い合わせ・デモ環境の利用相談

日本語でご相談いただけます。